医療
診察室を出ると、半分は覚えていません
医師の説明義務はどこまで書面に残るのか、患者が請求できる書類は何か、そして親の診察の説明を代わりに残しておく方法について。
診察室ではだいたいこう進みます。医師が説明し、患者はうなずき、次の患者が待っています。
そして外に出て、付き添いの家族が聞きます。何て言われたの。
半分は覚えていません。残りの半分も正確ではありません。
理解できなかったのではなく、あの状況では記憶が残りにくいのです。
説明義務は「努力義務」です
医療法第1条の4第2項は、医師をはじめとする医療の担い手について、医療を提供するにあたり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと定めています。
条文の形は努力義務です。そして日常の外来診療について、説明の内容を書面で交付することまでは求められていません。
書面が使われるのは、手術や侵襲的な検査・治療のように危険性や副作用が問題になる場面です。判例も、侵襲的な医療行為については病名、必要性、方法と内容、予測される危険や合併症、行わなかった場合に予測される結果などを説明すべきものとしています。実務では説明文書と同意書がその役割を担っています。
逆にいえば、それ以外は書面になりません。
薬を変える理由、検査結果の見方、しばらく様子を見ようという判断。いちばん頻繁に聞く説明ほど、どこにも残らないということです。
患者が請求できるもの
まず使える制度から整理します。
診療記録の開示。 厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は、診療記録の開示を含む診療情報の提供を積極的に推進すべきものとしています。個人情報保護法にもとづく開示請求も可能で、カルテ、検査結果、画像などが対象になります。
説明文書・同意書の控え。 手術や侵襲的な処置の前に受け取った書面は、控えを手元に残しておきます。署名して病院に置いてくるだけで終わりにしないことです。
診療情報提供書。 別の医療機関にかかるとき、セカンドオピニオンを求めるときに発行してもらえます。
ここまでで書面の部分は確保できます。残るのは口頭でしか交わされなかった部分です。
親の診察となると、話が重くなります
高齢の家族の診察でよく起きることがあります。
説明は早く、用語は馴染みがなく、聞き返しにくい。そして診察室を出ると「大丈夫だって」の一言に要約されます。
子が付き添えばよいのですが、毎回は難しい。かといって、親に録音アプリを立ち上げてから診察室に入ってほしいと頼むのも現実的ではありません。慣れない状況で画面を操作しながら話を聞くのは、いちばん難しいことです。
先に設定しておけば、操作は要りません
TalkSafeはこうした場面で使えます。
子が親の端末にアプリを入れ、あらかじめいくつか言葉を決めておくと、その言葉が聞こえたときに録音が始まります。親のほうは何もしなくて構いません。画面がロックされたままでも始まるので、端末はポケットやかばんの中で大丈夫です。
そして決めておく言葉は、本人が言う言葉である必要がありません。 医師が説明のなかで口にしそうな言葉を登録しておけばよいのです。検査、手術、薬、結果、様子を見ましょう、といった言葉です。説明が始まる瞬間が、そのまま録音の始まる瞬間になります。
録音が始まった時点の直前30秒もあわせて保存されるため、説明が始まってから引っかかった場合でも、冒頭からファイルに入っています。
診察が終わったら、子がその音声を聞けばよい。「大丈夫だって」が実際に何を指していたのかが分かります。
いくつか補足を
録音中は通知が表示され続け、消すことはできません。 自分が参加している診察を自分で記録するためのものです。日本では会話の当事者による録音は違法ではありません。
医療者に伝えておくほうがよいです。 告知義務はありませんが、診察室は信頼が前提の場です。「説明をうまく覚えられないので録音してもよいですか」と尋ねれば、たいていは問題になりません。医療機関によって方針が異なることもあるので、確認しておくほうが確実です。
録音は理解の代わりにはなりません。 分からないところはその場で聞き返すのが先です。記録は後から確認するためのもので、いま理解しなくてよいという意味ではありません。
納得できないことがあれば、各都道府県の医療安全支援センターに相談できます。医療機関との話し合いの進め方について助言を受けられます。
医師の説明義務はどこまで定められていますか
医療法第1条の4第2項は、医療の担い手は医療を提供するにあたり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと定めています。条文上は努力義務であり、日常の外来診療について書面の交付までは求められていません。
書面の同意が必要になるのはどんなときですか
手術や侵襲的な検査・治療など、危険性や副作用が問題になる医療行為では、説明文書と同意書を用いるのが実務上の標準です。判例も、侵襲的な医療行為については病名・必要性・方法・予測される危険や合併症・行わなかった場合の結果などの説明を求めています。
診療記録は見せてもらえますか
厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は診療記録の開示を含む診療情報の提供を積極的に推進すべきものとしており、個人情報保護法にもとづく開示請求も可能です。カルテ、検査結果、画像などが対象になります。
日常の診察で聞いた説明は記録に残りますか
説明の要点は診療記録に記載されますが、実際に何をどう説明したかがそのまま残るわけではありません。薬を変える理由や検査結果の解釈といった、いちばん頻繁に聞く説明ほど書面には残りにくいのが実情です。
親の診察に付き添えないときはどうすればよいですか
記憶に頼らずに済む形を用意しておくことです。診療情報提供書や診療記録の開示を求める方法があり、本人が参加している診察であれば会話を録音しておくこともできます。事前に設定しておけば、当日は本人が何も操作する必要がありません。
この記事は一般的な情報提供であり、医学的・法的助言ではありません。健康上の問題は医療者に、個別の法的事案は弁護士にご相談ください。
医師の説明義務はどこまで定められていますか
医療法第1条の4第2項は、医療の担い手は医療を提供するにあたり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならないと定めています。条文上は努力義務であり、日常の外来診療について書面の交付までは求められていません。
書面の同意が必要になるのはどんなときですか
手術や侵襲的な検査・治療など、危険性や副作用が問題になる医療行為では、説明文書と同意書を用いるのが実務上の標準です。判例も、侵襲的な医療行為については病名・必要性・方法・予測される危険や合併症・行わなかった場合の結果などの説明を求めています。
診療記録は見せてもらえますか
厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」は診療記録の開示を含む診療情報の提供を積極的に推進すべきものとしており、個人情報保護法にもとづく開示請求も可能です。カルテ、検査結果、画像などが対象になります。
日常の診察で聞いた説明は記録に残りますか
説明の要点は診療記録に記載されますが、実際に何をどう説明したかがそのまま残るわけではありません。薬を変える理由や検査結果の解釈といった、いちばん頻繁に聞く説明ほど書面には残りにくいのが実情です。
親の診察に付き添えないときはどうすればよいですか
記憶に頼らずに済む形を用意しておくことです。診療情報提供書や診療記録の開示を求める方法があり、本人が参加している診察であれば会話を録音しておくこともできます。事前に設定しておけば、当日は本人が何も操作する必要がありません。