労働
聞いていた条件と違ったら、その場で辞められます
労働条件の書面明示は使用者の義務です。条件が事実と違ったときの即時解除権、退職時の7日ルール、そして雇う側が残しておくべきものまで。
アルバイトで揉めるきっかけは、たいてい同じところにあります。
書面をもらっていない。
その状態で、時給がいくらか、シフトがどうなるか、試用期間があるかが、すべて口約束だけで決まっています。
書面がなければ、条件は記憶の中にしか残りません。そして記憶は双方で食い違います。
書面の交付は義務です
まずはっきりさせておきます。労働条件を書面でもらえなかったのは、使用者側の義務違反です。
労働基準法第15条は、労働者を採用するときに賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めており、絶対的明示事項については書面の交付が必要です。労働者が希望した場合に限り、FAXや電子メール等の方法も認められています。
そして2024年4月から明示事項が追加されました。
- 就業の場所・従事する業務の変更の範囲
- 有期労働契約の更新上限
- 無期転換申込機会に関する事項
アルバイトや短期の勤務も対象です。「うちは契約書とか書かないので」という言葉自体が、すでに違反にあたります。
条件が違ったら、その場で辞められます
ここは知られていない割に強い規定です。
労働基準法第15条第2項により、明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。 予告期間も要りません。
さらに第3項では、就業のために住居を変更していた場合、契約解除の日から14日以内に帰郷するときの旅費を使用者が負担しなければならないとされています。
つまり「聞いていた話と違う」は、我慢する理由ではなく法律上の権利の発動条件です。ただし「明示された条件と違う」ことが前提なので、何を明示されたのかがはっきりしていることが必要になります。
辞めた後の7日ルール
労働基準法第23条は、労働者が死亡または退職した場合、権利者の請求があれば7日以内に賃金を支払い、積立金・保証金・貯蓄金など労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定めています。
「後日払う」「今月は厳しい」と放置すれば第23条違反です。
そして第104条第1項により、労働者は事業場に法令違反がある場合、労働基準監督署に申告できます。退職後の未払いも対象です。申告を受けた監督署は事実関係を調査し、会社に是正指導や勧告を行います。費用はかかりません。
時効は当分の間3年です。 労働基準法第115条は消滅時効を5年と定めていますが、附則第143条第3項の経過措置により当分の間は3年とされています。起算点は各賃金の支払期日で、3年という数字は労働関係書類の保存期間に合わせたものです。
退職金だけは例外で5年のままです。この経過措置の対象外とされています。
経過措置がいつ終わるかは決まっていないため、現時点では3年を前提に考えるのが正確です。いずれにせよ、放置せず早めに労働基準監督署や弁護士・社会保険労務士に相談してください。
では、何で示すのか
書面がないと、ここで困ります。
監督署は事実関係を確認しますが、時給がいくらで決まっていたのか、何時間働く約束だったのか、試用期間の話があったのかを双方が違うことを言えば、判断が難しくなります。
書面がなくても使える資料はあります。
- 出退勤の記録、シフト表の写真
- 給与の振込履歴
- 業務指示のやり取り(メッセージアプリ、メール)
- 一緒に働いていた人の証言
そして条件を決めたときに交わされた言葉です。 面接や初出勤の場では、こういう話が出ます。
「時給は◯円で、慣れてきたら上げるから」 「最初のひと月は研修期間なので少し低くなります」 「契約書は落ち着いてから書きましょう。まずは来てみて」 「うちの業界だとそれは普通つかないんですよ」
こうした言葉はどこにも残りません。そして後で争いになったとき、そう言われたことを示すのは働いていた側になります。
雇う側から見ると
ここまでは働く側の話です。同じことを反対から見ると、こうなります。
書面を作らなかった側が不利になります。 条件を巡って争いになったとき、書面がなければ使用者にも自分の主張を裏づける材料がありません。「そんな話はしていない」という言い分だけでは、監督署の調査で弱い立場になります。
そして未交付そのものが違反です。 賃金を全額支払っていたとしても、労働条件を書面で明示しなかった事実だけで労働基準法第15条違反となり、罰則の対象になります。賃金の件で申告が入ると、この点も併せて確認されることが少なくありません。
固定残業代は特に注意が必要です。 基本給と区別して金額と時間数を明確に記載しないと無効と判断され、後から未払い残業代を請求されるリスクがあります。曖昧な書き方はかえって会社側の負担になります。
書類の保存期間も同じ3年です。 労働者名簿、賃金台帳、雇入れや賃金に関する重要書類の保存期間は法律上5年とされつつ、経過措置で当分の間3年とされています。時効と保存期間が揃っているのは偶然ではなく、争いになったときに手元に資料があるようにという設計です。逆にいえば、保存を怠れば時効内の請求に対して反論する材料を自ら失うことになります。
口約束は雇う側にも不利に働きます。 条件を正確に説明していたのに、後から違う約束があったと主張された場合、立場が入れ替わっただけで同じ問題です。そのとき何も残っていないことも同じです。
結局、双方に同じ助言になります。決めたことをその場で残しておくこと。 書面一枚が後の数か月を節約します。
条件を決める場を残す方法
いちばん確実なのは書面です。労働条件通知書を出してもらうよう求めることが第一で、これは要求ではなく法律上の権利です。出してもらえないなら、メッセージで「時給◯円、週◯日、◯時間と伺っています」と確認しておくのも方法です。返信が来れば、それが記録になります。
とはいえ面接の場でそれをするのは簡単ではありません。採用される前で気を遣いますし、そもそもその言葉が後で問題になる言葉かどうかは、その場では分かりません。
TalkSafeはこうした場面で使えます。あらかじめいくつか言葉を決めておくと、それが聞こえたときに録音が始まります。画面がロックされたままでも始まります。 端末はポケットに入れたままで構いません。
そして決めておく言葉は、自分が言う言葉である必要がありません。 店長や採用担当が条件を説明するときに口にしそうな言葉を登録しておけばよいのです。時給、研修、シフト、契約書、給料日、といった言葉です。条件の話が出た瞬間が、そのまま録音の始まる瞬間になります。
録音が始まった時点の直前30秒もあわせて保存されるため、条件の話が始まってから気づいた場合でも、冒頭からファイルに入っています。
いくつか補足を
録音中は通知が表示され続け、消すことはできません。 自分が参加している場を自分で記録するためのものです。日本では会話の当事者による録音は違法ではありません。
出退勤の記録を毎日残してください。 書面がない状況では、これがいちばん強い資料になります。メモアプリに日付と時刻を書くだけで十分です。何時間働いたかが争点になることが多いためです。
辞める前に資料を確保してください。 シフト表やメッセージの履歴は、退職後にアクセスできなくなることがあります。
どちらの側でも、習慣は同じです。 合意したことを、その場で残しておくことです。
労働条件は書面でもらえるものですか
労働基準法第15条により、使用者は労働者を採用するときに賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、絶対的明示事項については書面の交付が必要です。労働者が希望した場合はFAXや電子メール等の方法も認められています。アルバイトや短期の勤務も対象です。
2024年4月から何が変わりましたか
明示事項が追加されました。就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限、無期転換申込機会などが新たに明示事項に加わっています。
聞いていた条件と実際が違った場合はどうなりますか
労働基準法第15条第2項により、明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。就業のために住居を変更していた場合は、解除の日から14日以内に帰郷するときの旅費を使用者が負担しなければなりません。
辞めた後の給料はいつ払ってもらえますか
労働基準法第23条により、労働者の死亡または退職の場合、権利者の請求があれば7日以内に賃金を支払い、積立金や保証金など労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。
会社が払わないときはどこに相談しますか
労働基準法第104条第1項により、労働者は事業場に法令違反がある場合、行政官庁や労働基準監督官に申告することができます。退職後の未払いも対象で、労働基準監督署は事実関係を調査し是正指導や勧告を行います。
この記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士や社会保険労務士にご相談ください。
労働条件は書面でもらえるものですか
労働基準法第15条により、使用者は労働者を採用するときに賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、絶対的明示事項については書面の交付が必要です。労働者が希望した場合はFAXや電子メール等の方法も認められています。アルバイトや短期の勤務も対象です。
2024年4月から何が変わりましたか
明示事項が追加されました。就業場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新上限、無期転換申込機会などが新たに明示事項に加わっています。
聞いていた条件と実際が違った場合はどうなりますか
労働基準法第15条第2項により、明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。就業のために住居を変更していた場合は、解除の日から14日以内に帰郷するときの旅費を使用者が負担しなければなりません。
辞めた後の給料はいつ払ってもらえますか
労働基準法第23条により、労働者の死亡または退職の場合、権利者の請求があれば7日以内に賃金を支払い、積立金や保証金など労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。
未払い賃金はいつまで請求できますか
労働基準法第115条は消滅時効を5年と定めていますが、附則第143条第3項の経過措置により当分の間は3年とされています。起算点は各賃金の支払期日です。ただし退職金(退職手当)はこの経過措置の対象外で、5年のままです。
会社が払わないときはどこに相談しますか
労働基準法第104条第1項により、労働者は事業場に法令違反がある場合、行政官庁や労働基準監督官に申告することができます。退職後の未払いも対象で、労働基準監督署は事実関係を調査し是正指導や勧告を行います。