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法律

録音はあるのに、証拠として使えないとき

録音が使えなくなる理由は、たいてい法律ではありません。原本と、冒頭です。14か国が録音を証拠として受け入れる条件を比べました。

録音データを持って相談に行き、三十秒ほど聞いてもらったところで、思っていなかった言葉が返ってくることがあります。

「これは証拠として使いにくいですね」

録音が証拠にならない理由は、たいてい法律ではありません。原本と、冒頭です。

14か国が録音を受け入れる条件

国 複製でも足りるか 求められるもの
日本 足りる 全体の音声データと反訳書
韓国 同一性の立証が必要 原本、または改変のない複製であることの証明
アメリカ 原則として足りる 会話を偏りなく写していること
イギリス 事案による 改変がないことを提出者が示す
カナダ 足りる 保存システムの完全性
オーストラリア 事案による 出所と真正性を先に確立
アイルランド 事案による 原本ファイルと証言による裏づけ
ニュージーランド 事案による 不当に得た場合は比例性の審査
インド 証明書があれば 法定の証明書が必須
スペイン 原則として足りない 原本の媒体・全体・反訳を一緒に
メキシコ 足りる 争う側が立証責任を負う
チリ 事案による 条件つきの受容へ移行中
アルゼンチン 事案による 同意なき社内録音を排除した例
イタリア 足りる 争われた場合は完全性の立証

調べた国だけを入れています。ドイツ・フランス・ブラジルなどはまだ確認できていないため外しました。

しきい値は国ごとに違いますが、見ている軸はどこも同じです。これは原本か、そしてこれで全部か。

一つ目の関門は原本です

契約書には署名があり、印が押されます。録音ファイルにはそれがありません。

その不在が、規律の理由そのものです。音声ファイルは、誰が作ったのかも、何かが抜けているのかも、見ただけでは分かりません。そしてデジタル音声を切ることは簡単です。だから内容を検討する前に、そのファイルが主張どおりのものであることを示す必要があります。

日本の民事では、録音は準文書として扱われ、会話の全体を音声データとして提出し、あわせて反訳書を出すのが実務です。反訳書だけを出した場合、相手方は民事訴訟規則144条によって録音媒体の写しの交付を求めることができます。

そして反訳書は音声を完全には写しません。周囲の音や言いよどみは落ち、聞き取りの誤りも起こります。相手方が音声そのものを聞いて反訳の正確性を確かめようとするのは当然のことです。

編集は、しなくても疑われます

訴訟では、元のデータを編集して自分に不利な部分を落とした複製を出す例が実際にあります。だからこそ、一部だけを提出することと編集することは避けるべきだとされています。

問題は、自分にそのつもりがなくても同じ疑いを受けうることです。手元に切り出したファイルしかなければ、切ったのか、それとも最初からそれだけだったのかを、外から見分ける方法がありません。

原本はこうして失われます

わざと消す人はいません。たいていこの二つです。

弁護士にファイルを送る。 メッセージアプリで送れば圧縮され、形式が変わることがあります。届いたものは原本ではなく複製です。

保存容量が足りなくなる。 すでに送ってあるから消しても大丈夫だと考えますが、残るのは複製だけです。

どちらもその時点では失敗に見えません。しかしどちらも、相手方に争う材料を渡します。

二つ目の関門は冒頭です

原本の問題を抜けても、もう一つ残ります。この録音は会話を偏りなく写しているか、です。

問題になる一言だけが入っていて、その言葉が出てきた流れがなければ、相手方はこう言います。「前の会話を聞けば意味が違います」

このとき冒頭がなければ、反論する材料がありません。

ここで誤解されやすい点があります。冒頭がないのは、誰かが切ったからではありません。最初から録れていないのです。

遅れて押すのは失敗ではなく既定値です

会話の最初から録音を始める人はいません。

空気がおかしくなってから、相手の話が変わってから、これは残しておかないとまずいと判断してから押します。つまり録音は、もう問題が起きたと気づいた時点から始まります。

その前は、すでに過ぎています。

原本は、録音が終わったあとに気をつければ守れます。冒頭はそうはいきません。ボタンを押す瞬間に決まってしまっています。

このずれそのものを扱ったのが録音ボタンを押したときには、もう遅いです。

TalkSafeが開始直前の30秒をあわせて保存するのは、そのためです。気づいてから手が動くまでの空白を、ファイルに残すための仕組みです。

しきい値が特に高い二つの国

インドは、電子記録を証拠として出すために法定の証明書を添えることを求めています。2024年7月1日に施行されたBharatiya Sakshya Adhiniyam第63条第4項の定めで、旧インド証拠法第65B条を引き継いだ規定です。証明書がなければ、原本の機器そのものを提出しない限り原則として受け付けられません。

スペインは民事訴訟法第382条で、録音を全体のまま、原本の媒体で、書面の反訳とともに提出するよう定めています。相手方が真正性や正確性を争えば鑑定で立証する必要があり、切り取り・欠落・修正はいずれも争いの根拠になります。

反対にアメリカは複製を原本と同程度に受け入れ(連邦証拠規則1003条)、カナダはそのファイルが保存されていた電子文書システムの完全性を示せば最良証拠の要件を満たすとしています(カナダ証拠法31条の2)。

まとめ

  • 原本は消さない。送ることと残すことは別です。
  • 提出は必要な区間だけでも構いませんが、原本に上書きしない。
  • 冒頭はあとから作れません。録音の始まり方で決まります。

録音したあとの扱いは録音したあとにすべきことと、してはいけないことに、そもそも録音が適法かどうかは録音と同意の法律にまとめています。

契約書と違う口頭の合意を立証しなければならない場合は契約書にはない。打ち合わせで口頭で決めたことをご覧ください。

繰り返しを記録として積み重ねる必要がある場合はストーカー被害の証拠はどう残すかをご覧ください。

この記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の事案は弁護士にご相談ください。

本物の録音なのに、なぜ証拠として使えないことがあるのですか。

多くは原本性と完全性の問題です。録音ファイルには署名も押印もないため、内容を検討する前に、そのファイルが主張どおりのものであり、会話を偏りなく写しているかどうかが問われます。原本を消してしまっていたり、圧縮を経たコピーしか残っていない場合、その点が争いの中心になり、答える立場に立つのは録音した側です。

録音データはどのように提出するのが安全ですか。

日本の民事訴訟では、会話の全体を音声データとして提出し、あわせて反訳書を出すのが実務です。反訳書だけを提出した場合、相手方は民事訴訟規則144条にもとづいて録音媒体の写しの交付を求めることができます。一部だけを出したり編集したりすることは避けるべきだとされています。

反訳書があれば音声データは要らないのではありませんか。

反訳書は音声を完全には写しません。周囲の音や言いよどみが省かれ、聞き取りの誤りも起こります。相手方が反訳書の正確性を確かめるために音声そのものを求めることは想定されており、音声データを出せないこと自体が不利にはたらくことがあります。

必要な部分だけを切り出して提出してもよいですか。

提出は必要な区間だけでも構いませんが、原本は別に残してください。切り出したファイルしか手元にないと、改変の有無が争われます。TalkSafeの切り取りは、切り取った区間を新しいファイルとして保存し、元のファイルはそのまま残す仕組みです。

録音を始めるのが遅くて冒頭がない場合はどうなりますか。

その発言が出てきた流れを示せなくなります。相手方は前の会話を聞けば意味が違うと主張でき、冒頭がなければ反論する材料がありません。会話の最初から録音している人はほとんどおらず、多くは状況がおかしくなったあとに録音を始めます。

TalkSafeは押す前の部分をどう残すのですか。

TalkSafeは、常に直前の30秒を保持しながら、あらかじめ決めた言葉を検知すると録音を開始するAndroidの録音アプリです。すでに過ぎた30秒がファイルに含まれるため、気づいてから端末を操作するまでの空白を残すことができます。

国によって録音の扱いは違いますか。

しきい値が違います。インドは法定の証明書がなければ電子記録を原則として受け付けず、スペインは原本の媒体と反訳を一緒に提出するよう法律で定めています。一方でアメリカは複製を原本と同じように扱い、カナダは保存システムの完全性を示せば足りるとしています。原本性と完全性を見るという軸はどの国も同じです。