エイチカンパニー

法律

ストーカー被害の証拠はどう残すか

ストーカーは一度ではなく繰り返しが犯罪になります。だから証拠も積み重ねる必要があります。13か国のストーカー規制と、被害者が残せる記録を比べました。

仕事から帰ると、家の前にその人が立っています。

「少しだけ話そう。5分でいいから」

先週もいました。その前の週も。警察に相談しようとするたびに、同じ疑問が浮かびます。証拠はあるのか。

ストーカーは一度ではなく、繰り返しが犯罪になります。だから証拠も積み重ねる必要があります。

13か国のストーカー規制

国 根拠 基本の刑 被害者の告訴が必要か
日本 ストーカー規制法 1年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金(禁止命令違反は2年) 不要(2017年から非親告罪)
韓国 ストーキング処罰法18条 3年以下の懲役・3,000万ウォン以下の罰金(凶器は5年) 不要(2023年に反意思不罰を廃止)
イギリス(イングランド・ウェールズ) 1997年ハラスメント防止法2A条・4A条 略式で最長6か月、暴力への恐怖を生じさせた場合は最長10年 不要
アメリカ 連邦法18 U.S.C. §2261Aと州法 連邦の基本は5年以下、州ごとに異なる 州ごとに異なる
カナダ 刑法264条 正式起訴で最長10年 不要
オーストラリア(ニューサウスウェールズ州) 家庭内・個人間暴力犯罪法13条 最長5年 不要
ニュージーランド 1997年ハラスメント法8条 最長2年。12か月以内に2回以上 不要
インド 2023年新刑法78条 初犯3年、再犯5年以下 男性が女性に対して行う行為として規定
スペイン 刑法172条の3 3か月〜2年の拘禁または罰金 必要(家庭内・ジェンダー暴力の関係は例外)
イタリア 刑法612条の2 1年〜6年6か月 原則必要。未成年者・障害者が被害者なら職権
メキシコ 連邦新設案が2026年2月に下院通過(2〜4年) 官報公布は未確認。州ごとに異なる —
チリ 刑法に一般的なストーカー罪なし(法案審議中) — —
アルゼンチン 刑法にストーカー罪なし。ブエノスアイレス市軽犯罪法52条 1〜5日の公益労働・罰金・拘留 必要

調べた国だけを入れています。アイルランド・ドイツ・フランス・ブラジルは確認できていないため外しました。アメリカとオーストラリアは州ごとに法律が違うため代表的な州を載せ、メキシコの連邦改正案は下院通過までは確認しましたが、官報に掲載され施行されたかは確認できていません。

目を引くのは二点です。日本と韓国は被害者の意思と関係なく処罰できる仕組みに変わり、チリとアルゼンチンには刑法上のストーカー罪そのものがありません。

日本は告訴がなくても処罰でき、追跡手段も塞いできました

ストーカー規制法は、ストーカー行為をした者を1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に、禁止命令等に違反してストーカー行為をした者を2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金に処します。平成28年の改正(2017年施行)で非親告罪になり、告訴がなくても起訴される可能性があります。

規制の範囲も広がっています。つきまとい・待ち伏せ・押し掛けなどに加え、2021年の改正で相手の承諾なくGPS機器等で位置情報を取得する行為や機器を取り付ける行為が規制対象になり、2025年12月30日からは紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得なども加わりました。

韓国も同じ方向です。ストーキング犯罪は3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金で、凶器を持っていれば5年以下です。2023年7月の改正で、被害者が処罰を望まなければ処罰できないという規定が削除されました。2024年1月からは、接近禁止などの措置を守らせるために加害者に位置追跡の電子装置を付けられるようになっています。

英語圏は「繰り返し」と「恐怖」を別々に見ます

イギリスはストーキングを二段階に分けています。基本のストーキング(1997年ハラスメント防止法2A条)は略式犯罪で最長6か月、暴力への恐怖や深刻な不安を生じさせたストーキング(4A条)は最長10年です。2021年1月からは、有罪判決の前でも警察がストーキング保護命令を申し立てられます。

カナダは、繰り返しつきまとう・連絡する・見張ることで相手に安全への合理的な恐怖を抱かせれば刑事ハラスメント(刑法264条)になり、正式起訴で最長10年です。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州は、身体的・精神的な危害への恐怖を生じさせる意図でつきまとったり脅したりすると最長5年で、被害者が実際に恐怖を感じたことまで検察が証明する必要はありません。

ニュージーランドは基準がもっとも具体的です。ハラスメントは12か月以内に2回以上の特定の行為からなる行動の型であり、相手に安全への恐怖を抱かせる意図があったか、そうなると知っていれば刑事ハラスメントとして最長2年です(1997年ハラスメント法8条)。

アメリカは州ごとに違います。連邦法(18 U.S.C. §2261A)は州境を越えるものや電子通信を使ったストーキングを処罰し、基本は5年以下です。カリフォルニア州(刑法646.9条)は、繰り返しのつきまといや嫌がらせに加えて信用できる脅迫があることを要件にしています。

インドは2023年の新刑法78条で、ストーキングを男性が女性に対して繰り返しつきまとい連絡する行為、または女性のインターネットやメールの利用を監視する行為と定めています。初犯は3年以下、再犯は5年以下です。

ヨーロッパは告訴の要否が分かれます

スペインは刑法172条の3で、正当な権限なく執拗かつ反復的につきまとい、日常生活を深刻に乱す行為を3か月〜2年の拘禁または罰金で処罰します。原則として被害者の告訴が必要ですが、家庭内暴力・ジェンダー暴力の関係では告訴なしに処罰されます。

イタリアは刑法612条の2で、反復した脅迫や嫌がらせによって持続的で深刻な不安や恐怖を生じさせ、または生活習慣を変えさせた場合を1年〜6年6か月で処罰します。原則として告訴が必要で、取下げは法廷でしかできず、反復した脅迫によるものは取り下げられません。被害者が未成年者や障害者であれば職権で処罰されます。

ストーカー罪がない国もあります

チリは、確認した範囲では刑法に一般的なストーカー罪がありません。新たにハラスメント罪を設ける法案(議案番号14.477-07)が2021年に下院に提出され、審議が続いています。

アルゼンチンも刑法にストーカー罪はありません。ブエノスアイレス市は軽犯罪法52条で威圧的な嫌がらせを処罰しますが、1〜5日の公益労働、罰金または拘留で、被害者の申告が必要です。

メキシコは連邦刑法にストーカー罪を新設する改正案(通称バレリア法、2〜4年)が2026年2月に下院を全会一致で通過しましたが、官報に掲載され施行されたかは確認できていません。

必要なのは「一度」ではなく「何度も」の記録です

ほとんどの国が繰り返しを要件にしています。日本の「反復して」、ニュージーランドの「12か月以内に2回以上」、スペインの「執拗かつ反復的に」。だから決定的な一場面より、日付ごとに積み重なった記録が力を持ちます。

残せるものは次のとおりです。

  • メッセージ・SNSの画面保存。 送信日時とアカウントが見えるように残します。
  • 着信履歴。 何回、何時にかかってきたかが繰り返しを示します。
  • 来た日の記録。 日付、時刻、場所、言われたことを、その日のうちに書いておきます。
  • 自分が参加した会話や通話の録音。 脅しや「一度だけ会って」という言葉がそのまま残ります。

日本には自分が参加している会話の録音を処罰する法律はありません(日本には「盗聴罪」がありません)。通話を録音できるかどうかは機種によって違います(Androidの通話録音)。

逆に、してはいけないことも明確です。 相手の車や持ち物に録音機や位置追跡機器を仕掛けること、相手が第三者と話す会話を録音することは、自分が参加していない会話の録音や無承諾の位置情報の取得になり、被害者であっても違法になり得ます。日本では、無承諾のGPSによる位置情報の取得そのものがストーカー行為です。

その瞬間は予告なく来ます

メッセージや着信履歴は自然に残ります。残らないのは待ち伏せされた瞬間です。家の前、会社の前、エレベーターの前で急に話しかけられたとき、端末を取り出して録音ボタンを押すこと自体が相手を刺激しかねません。

TalkSafeは、あらかじめ決めた言葉が聞こえると録音を始めるAndroidの録音アプリです。キーワードは話す人に関係なく認識されるため、「やめてください」「帰ってください」のような自分が言う言葉を決めておくことができ、画面がロックされた状態でも動作します。録音が始まる前の30秒もあわせて保存されるので、その言葉を言う直前に相手が言ったこともファイルに入ります。

録音を証拠として使うとき原本と冒頭がなぜ大事かは録音はあるのに、証拠として使えないときにまとめています。

まとめ

  • ストーカーは繰り返しが要件です。証拠も日付ごとに積み重ねます。
  • 日本は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、2017年から告訴がなくても処罰できます。
  • GPSや紛失防止タグによる無承諾の位置情報取得も規制対象です。
  • スペインとイタリアは原則として告訴が必要で、チリとアルゼンチンには刑法上の一般的なストーカー罪がありません。
  • 画面保存、着信履歴、日付ごとのメモ、自分が参加した会話の録音を残し、相手に録音機や追跡機器を仕掛けることはしません。

危険を感じたら、記録より先に警察に相談してください。

この記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の事案は弁護士にご相談ください。

ストーカー行為にはどんな罰則がありますか。

ストーカー規制法により、ストーカー行為をした者は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。禁止命令等に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。

被害者が告訴しなければ処罰されないのですか。

いいえ。平成28年の改正(2017年施行)でストーカー行為罪は非親告罪になり、告訴がなくても起訴され処罰される可能性があります。

GPSや紛失防止タグで居場所を知られるのもストーカー行為ですか。

はい。2021年の改正で、相手の承諾なくGPS機器などで位置情報を取得する行為や機器を取り付ける行為が規制対象になりました。さらに2025年12月30日からは、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得なども規制対象に加わっています。

ストーカー被害の証拠として何を残せばよいですか。

メッセージやSNSの画面の保存、着信履歴、来た日時と場所・言われたことをその日のうちに書いた記録、そして自分が参加した会話や通話の録音が使えます。一つひとつは小さく見えても、日付ごとに集まれば繰り返しを示す材料になります。

相手との会話や通話を、知らせずに録音してもよいですか。

日本には自分が参加している会話の録音を処罰する法律はありません。一方で、相手の車や持ち物に録音機や位置追跡機器を仕掛けること、相手が第三者と話す会話を録音することは、被害者であっても違法になり得ます。日本では無承諾のGPSによる位置情報の取得そのものがストーカー行為です。

ほかの国でもストーカーは犯罪ですか。

多くの国で処罰されますが、仕組みは違います。韓国は2023年に被害者の意思に反して処罰できないという規定を廃止し、スペインとイタリアは原則として被害者の告訴が必要です。一方でチリとアルゼンチンには、確認した範囲では刑法に一般的なストーカー罪がありません。

TalkSafeはストーカー被害の場面でどう使えますか。

TalkSafeは、あらかじめ決めた言葉が聞こえると録音を始めるAndroidの録音アプリです。画面がロックされた状態でも動作し、録音開始前の30秒もあわせて保存されるため、予告なく待ち伏せされたときに端末を取り出して操作しなくても、自分が参加した会話が残ります。