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法律

職務質問や取調べを録音してもいいのか

警察官との会話も、自分が当事者の会話です。13か国で警察官を録音・撮影することが認められるか、どこに線が引かれるかを比べました。

夜、車を停めていると窓をノックされます。

「免許証を見せてもらえますか」

片手には免許証、もう片方の手はハンドルの上。話がおかしな方向に進んでも、この瞬間にスマホを取り出して録音ボタンを押すのは難しいものです。

警察官との会話も、自分が当事者の会話です。調べた13か国で、公共の場で警察官を録音すること自体を禁止した国はありませんでした。

13か国で警察官を録音・撮影できるか

国 警察官を録音・撮影できるか 注意する点
日本 できる。禁止する法律はない 妨害すれば公務執行妨害。取調べの録音録画義務は重大事件等に限定(2019年)
韓国 できる。自分が参加した会話の録音は合法 職務を妨げれば公務執行妨害。2026年の刑事訴訟法改正で、要請があれば取調べ供述の録音を義務化(施行前)
アメリカ 9つの連邦控訴裁判所が公共の場での録音の権利を認める 州ごとに異なる。カリフォルニア州は録音だけでは拘束・逮捕の理由にならない
イギリス(イングランド・ウェールズ) できる。警察に撮影を止める権限はない テロ法58A条はテロを助ける情報のみ
カナダ できる。当事者録音は合法 安全のための移動指示に従わなければ妨害罪
オーストラリア(ニューサウスウェールズ州) 公共の場からの撮影はできる 私的な会話の音声録音は監視機器法で制限
ニュージーランド できる。禁止する法律はない 物理的に妨害しない
インド できる。警察署内の録画も公務秘密法違反ではない(ボンベイ高裁2022年) —
スペイン できる。撮影自体は制裁されない(憲法裁判所2020年) 警察官の安全を危険にさらす画像の使用は制裁
メキシコ できる。禁止する連邦法はない 手続を妨げない
チリ できる。妨げなければ権利(会計検査院) 警察も公共の場での活動を録画する義務(2023年)
アルゼンチン できる。禁止する法律はない 手続を妨げない
イタリア できる(個人情報保護機関) 顔が識別できる形での拡散には個人情報規定

調べた国だけを入れています。アイルランド・ドイツ・フランス・ブラジルは確認できていないため外しました。アメリカとオーストラリアは州ごとに法律が違うため、代表的な州を載せています。

どの国でも線はほぼ同じ場所にあります。録音することはできるが、録音しながら職務を妨げることはできない。そして撮ることと広めることは別に扱われます。

日本:禁止する法律はありません

職務質問の撮影や録音を具体的に禁止する法律はなく、撮影すること自体が直ちに違法になるわけではありません。日本には自分が参加している会話の録音を処罰する法律もありません(日本には「盗聴罪」がありません)。

線は妨害です。撮影や録音が職務質問の遂行に支障を与える態様で行われれば、公務執行妨害罪に問われる可能性があります。

警察官の肖像権については、公務中であれば受忍限度の範囲内で主張が認められないと考えられています。ただし、警察官に暴言を浴びせたり名誉を毀損したりする内容の動画は、肖像権やプライバシーの侵害と判断されることがあります。

取調べは制度で決まっています。2019年6月1日に施行された刑事訴訟法301条の2により、裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件について、逮捕・勾留中の被疑者の取調べ全過程の録音・録画が義務づけられました。それ以外の事件は義務の対象外です。

韓国:要請すれば取調べを録音する制度へ

韓国では、自分が参加した会話の録音は通信秘密保護法の処罰対象ではなく、警察官との会話も同じです。公共の場で職務中の警察官を撮影・録音することを禁止する法律もありません。

取調べについては、2026年7月31日に国会を通過した刑事訴訟法改正案が、被疑者や弁護人の要請があれば被疑者の供述過程を録音するよう義務化しました。施行時期は公布後に大統領令で定められます。

アメリカ:裁判所が積み上げてきた権利

アメリカには警察官を録音する権利を定めた連邦法はなく、裁判所が修正第1条から導いてきました。公共の場で警察官の職務を録音する権利は、第1・3・4・5・7・9・10・11巡回区の連邦控訴裁判所が認め、第2巡回区も2026年8月のMassimino v. Benoit事件で加わりました。ただし第2巡回区は、その権利が事件当時は明確に確立していなかったとして、警察官の免責を認めています。

カリフォルニア州は刑法148条(g)で、公共の場や自分が居る権利のある場所から警察官を撮影・録音したこと自体は職務妨害にあたらず、拘束や逮捕の理由にもならないと定めています(2016年施行)。

英語圏のほかの国

イギリスでは、公共の場での撮影に許可は不要で、警察には撮影を止める権限がありません。テロ法58A条は、テロを実際に助けるための警察官の情報にだけ適用されます。

カナダは会話の当事者による録音が合法で、公共の場で警察官の職務を録音できます。安全のための移動指示を拒めば妨害罪になり得ます。ニュージーランドにも公共の場での警察官の撮影を禁止する法律はありません。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州は、公共の場から見える警察の活動の撮影は禁止していませんが、私的な会話の音声録音は監視機器法7条で制限しています。

インドは、ボンベイ高等裁判所が2022年、警察署は公務秘密法上の「禁止場所」ではないとして、警察署内での録画もこの法律の違反ではないと判断しました。

スペイン・イタリア・中南米

スペインは2015年の市民安全法36条23号で、警察官の画像の「無許可」の使用を重大な違反としていましたが、憲法裁判所が2020年にこの「無許可」の文言を違憲と判断しました。残っているのは、警察官やその家族の安全、作戦の成功を危険にさらし得る画像の使用です。

イタリアの個人情報保護機関は、職務中の警察官を撮影することは認められるが、顔など識別できる形で拡散することには個人情報の規定が適用されるとしています。

メキシコとアルゼンチンには、公共の場で職務中の警察官を撮影することを禁止する法律がありません。チリでは会計検査院が、手続を妨げない限り録画は権利だとし、2023年の法律で警察自身にも公共の場での活動の録画が義務づけられました。

それでも守るべき線

  • 妨害しない。 録音はほぼどこでも合法ですが、物理的に職務を妨げれば処罰の対象になります。
  • 安全のための移動指示には従う。
  • 公開する前に考える。 録音は証拠として残し、公開は弁護士に相談してからにします。
  • 手を見える位置に置く。 職務質問の最中にポケットに手を入れる動作は誤解を招きます。

スマホを取り出す動作が問題になるとき

職務質問は予告なく始まります。手を見える位置に置くよう言われている状況で、スマホを取り出し、ロックを解除し、録音ボタンを押す動作は、それ自体が誤解を招きかねません。

TalkSafeは、あらかじめ決めた言葉が聞こえると録音を始めるAndroidの録音アプリです。キーワードは話す人に関係なく認識されるため、「免許証」「身分証」のような警察官が言いそうな言葉を決めておくことができ、画面がロックされた状態でも動作します。録音が始まる前の30秒もあわせて保存されるので、窓をノックされた直後の会話から残ります。

録音を証拠として使うとき原本と冒頭がなぜ大事かは録音はあるのに、証拠として使えないときに、スマホに触れずに録音を始める方法はスマホに触れずに録音を始める方法にまとめています。

まとめ

  • 警察官との会話も、自分が当事者の会話です。日本に職務質問の録音を禁止する法律はありません。
  • 調べた13か国で、公共の場で警察官を録音すること自体を禁止した国はありませんでした。
  • 線は妨害です。録音しながら職務を妨げれば公務執行妨害になり得ます。
  • 取調べの録音録画義務は、日本では重大事件などに限られています。
  • 撮ることと広めることは別に扱われます。

この記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の事案は弁護士にご相談ください。

職務質問を受けたとき、警察官との会話を録音してもよいですか。

職務質問の撮影や録音を禁止する法律はなく、録音すること自体が直ちに違法になるわけではありません。日本には自分が参加している会話の録音を処罰する法律もありません。ただし、撮影や録音が職務の遂行を妨げる態様で行われた場合は、公務執行妨害罪に問われる可能性があります。

警察官に撮影をやめるよう言われたら従う必要がありますか。

警察官にも肖像権はありますが、公務中であれば受忍限度の範囲で主張が認められないと考えられています。撮影を禁止する法律はないため、求められても従う義務は法律上ありません。ただし、職務の妨げになる位置であれば離れるなど、妨害と受け取られない配慮が必要です。

取調べは録音・録画されるのですか。

2019年6月1日に施行された刑事訴訟法301条の2により、裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件について、逮捕・勾留中の被疑者の取調べ全過程の録音・録画が義務づけられています。それ以外の事件は義務の対象外です。

アメリカでは警察官を録音できますか。

公共の場で職務中の警察官を録音する権利は、第1・2・3・4・5・7・9・10・11の連邦控訴裁判所が合衆国憲法修正第1条の権利として認めています。第2巡回区は2026年8月のMassimino v. Benoit事件で加わりましたが、当時は権利が明確に確立していなかったとして警察官の免責を認めました。

警察官を撮影した動画をネットに公開してもよいですか。

国によって違います。イタリアの個人情報保護機関は、職務中の警察官の撮影は認められるが、顔など識別できる形での拡散には個人情報の規定が適用されるとしています。日本でも、警察官に暴言や名誉を毀損する発言をしているような動画は、肖像権やプライバシーの侵害と判断されることがあります。

警察官の録音が禁止されている国はありますか。

調べた13か国のうち、公共の場で職務中の警察官を録音・撮影すること自体を禁止している国はありませんでした。スペインでは憲法裁判所が2020年、警察官の画像の『無許可』使用を制裁する規定の文言を違憲と判断しています。オーストラリアのニューサウスウェールズ州は、私的な会話の音声録音を監視機器法で制限しています。

TalkSafeは職務質問の場面でどう使えますか。

TalkSafeは、あらかじめ決めた言葉が聞こえると録音を始めるAndroidの録音アプリです。キーワードは話す人に関係なく認識されるため、「免許証」「身分証」のような警察官が言う言葉を決めておくことができます。画面がロックされた状態でも動作し、録音開始前の30秒もあわせて保存されます。